橘川幸夫のブログ
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太陽通信(ロッキングオン 1975年6月号)
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1975年6月 1日 07:14
さあ、掌を合わせましょう
右の掌はあなた、左の掌はわたし
握りあわなくても確かに
こすりつけなくても温く
ここが、まほろば
あなたと握手
あなたと合掌
まほろば合唱団Ⅱ
(テキスト=橘川幸夫+イラスト=本田義高)
太陽通信
すごく遠いところへ来てしまった気もするし、ますます中心に向かって若くなってくる気もします。悲しみとか怒りとか、そういういろいろな内的たかぶりが、すごく硬くなって、すごく鋭くなって、感情という範囲を突き抜けてしまったのかも知れません。愛、という言葉を使えるようになるために、呑気な僕は25年もかかってしまったよ。僕とあなたとをつなぐ根底的なもの、というより僕とあなたがここにこうして生きている事の唯一の理由。......ずいぶんとまどろっこしい言い方だけど、僕はもう焦ったりしません。ゆっくりと、浸みていくようにあなたに近づきたい。......例えば、プラトンの愛もキリストの愛も、昔、少し本で読んだきりだけど、僕はその相対臭さが嫌いでした。肉体愛と精神愛、悪魔と神。どうして彼らは、素晴しいものを素晴しいと認めるために、その反対概念をとってつけるのでしょう。太陽に照らされているモノには影があるけど、だけど、太陽そのものには影なんて概念は全くないのに。あなたはどんな事をしたって、どこから来た人だって、そんな事は無関係に断然素晴しい人なのにね。・・・・そして街にはプラトンの末裔たち。歌謡曲や擬似恋愛小説に出てくる愛というのは、所詮は、個人主義の、近代的自我の、相互自己主張にしか過ぎない。我愛す故に我在る、か。大仰に<自分>を振り回しながら愛し合ったり別れたりする恋人たち。コギトの最終的逃亡地点。・・・・うん、ちょっと脱線したかな。やっぱり僕たちは死骸に向かうのではなく、生きた、やさしい、あなたというリアリティに向かわなくてはいけない。
でも、もしかしたら僕たちは既に脱皮を完了してしまったのかも知れない。一歩街へ出ると歴史は教科書や新聞に書いてあるとおりに進行しているけど、僕がこうしてこうやって生きている歴史は、すごく、もぎたてのトマトのように新鮮だ。時はもう流れてはいない。時は、僕の目の前で、僕と一緒に、いっとう外側の殻をかさぶたのように剥がして行くだけだ。時はますます淀み、僕はますます軽みを覚える。そして、あの、純潔の訪問者がやってくる。あなたがやってくる。もう僕の欲情は分裂しない。もう僕は視線をそむけたりはしない。そして、はっきりとこう言うんだ。<あなたが欲しい。あなたへ向かっての完全な方向が欲しい!>ってね。
(だけど、自分で書いた言葉に自分ひとりで意味を吹き込む作業って後ろめたいな。僕は君に手紙を書いているけど、この瞬間は君だって僕に手紙を書いているはずだ。うん僕は君と出会えた事をすごく嬉しく思っているし、僕たちが新しい変化への旅を始めるためには僕とあなたの、極度に集約された新鮮な出会いのひきおこすエネルギー場が必要なのだ。およそ社会の通用するあらゆる意味での貨幣=金、学歴、順従心、等々、を一切持たない僕たちの初動エネルギーはこれしかないと思います。いくら鋭い事や美しい事が書かれている本でも、その本を読んで、新しい出会いが形成されなければ、そんなの鋭くも美しくもないしね。)
まろやかな朝陽に揺り起こされて僕は一日を迎える。そしてねむけまなこで鏡をのぞくと、そこにはあなたが映っている。嬉しくなって思わず振り向くと、そこに僕が微笑みながら立っている。変化する、とは見える事だ。僕があなたに、街が死体に......はっきりと見える事だ。僕たちは発見し続けることによってのみ変化し続ける。僕はもう疲れはしない。僕はもう昨夜の闇を信じない。僕は闇の中で知ったあなたの掌の感触だけを信じる。僕は僕の内的宇宙というものを信じない。僕は僕の内的宇宙のその中ではっきりと見たものだけをはっきりと信じる。信じる事以外に僕はあなたに告白する術(すべ)を何ひとつ知らない。僕はあなたへの呼び声に全ての体温を消費した。疲れている人は単に元気な事に飽きたのに過ぎない。どうして疲れはてたものがこれ以上疲れる余裕があるだろうか。僕は空白。僕は冷血。あなたへの視線だけが激しく発熱している。
僕は君からいろいろな事を教わりました。君がいろいろな世界を見せてくれたからです。君と出会えて本当に生まれてきて良かった。君のみせてくれたものは、映画じゃないし、君の聴かせてくれたのはROCKじゃないよね。あなたと眠りたい。そして、もう一度だけ一緒に夢をみたい。すてきなあなた。あなたと思いっきり一緒に。
(20100615入力者・深谷健一)
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