デメ研社説・コルシカ問題について 2009-10-12 []
2009年12月 6日 02:00

 10月7日にスタートした、オンライン雑誌販売・閲覧プラットフォーム「コルシカ(Corseka)」(運営会社・エニグモ)だが、その日のうちから、業界関係者からメールのおまけに「コルシカ炎上しますね」というのが挨拶のようになっていた。コルシカは、雑誌購入サイトなんだが、注文すると実物は送ってこないで、スキャンされたデータを独自のブラウザーで閲覧出来るという仕組みである。エニグモの言い分では、お客からの注文に対して、その都度、雑誌を購入している、とのことだが、その日のうちに小学館が猛抗議したようで、即刻、取り下げられていた。翌日には、日本雑誌協会が正式に抗議を行い、現在、販売しているのは数媒体。

 さて、こういう事件が起きると、野次馬諸氏は、決まって攻撃する側に回るが、ひねくれ者の橘川は、あえて、エニグモ側の立場から、この動きを考えてみたい。新しい騒動は、何らかしら未来の予兆なのだから、建設的に考えるべし。

 まず、エニグモの代表の一人である、田中禎人さんがスタート宣言をしている。彼は雑誌が好きで、雑誌状況がどんどん衰退して休刊・廃刊ラッシュになっていることに危機感を感じ、雑誌が読み捨てではなく、いつでも読み直せる環境が出来れば、雑誌状況を活性化出来るのではないか、と書いている。

 賛成である。出版社の現状は、雑誌の衰退がひどい。販売的にも、広告収入的にも、とてもビジネスとして成立するレベルを割り込んでいる媒体が多い。このままいけば、年末から来年にかけて、大規模な雑誌廃刊と、編集部のリストラが待ち受けているのは目に見えている。先週のニュースでは、アメリカの超有力雑誌社である、コンデナスト社は老舗雑誌の「グルメ」や、結婚情報誌の「モダン・ブライト」と「エレガント。ブライド」、育児雑誌の「クッキー」などを廃刊し、編集者も大量リストラだと伝えられている。まず、雑誌状況が、こういう状態だということを頭に入れて欲しい。

 今回の騒動は、個人で雑誌購入→それをエニグモがスキャン代行→購入者に閲覧させる、というビジネスモデルに対して、出版社や雑協などが抗議したわけだが、エニグモというのは、世間知らずのベンチャーではなく、どうやら博報堂上がりの人たちのベンチャーのようである。サイトを見ると、法律顧問として、TMI総合法律事務所の名前が掲載されているから、このビジネスモデルについては、相当に研究してリーガルチェックを経た上でスタートしたものだと思われる。出版社は、感情的になるよりも、もうすこし冷静に、このビジネスモデルの実態を検討してみたらどうだろうか。

 雑誌というのは、書籍と違って、期間限定的な商品である。月刊誌であれば、書店に並ぶのは最長1ヶ月。週刊誌であれば1週間。スピード感で勝負してきたわけだから、インターネットの普及によって、大きな打撃を受けたのは書籍できなくて雑誌の方である。コルシカのモデルは、新刊を突破口にして、バックナンバーを販売出来る可能性を秘めているわけだから、これは新たなビジネスチャンスとしてとらえるべきである。

▼提案1

◇雑誌の最新号を買ったら、その雑誌のバックナンバーのスキャンデータを1号分閲覧出来るサービスにする。バックナンバーを直接販売しても良いが、その手間よりも、エニグモが出版社と交渉して、過去のバックナンバーをスキャンして、あくまで、新刊の販促として位置づける。過去のバックナンバーが10冊分欲しくて、新刊雑誌を10冊購入するケースも出てくるだろう。しかし、これだと、ブープルや富士山でやってもおかしくないな(笑)

▼提案2

◇エニグモは、スキャニングの設備と体制を作ったのだろうから、いっそのこと、読者からの雑誌スキャンサービスに転換する。読者が持っている雑誌のバックナンバーは、マニアであれば捨てがたいだろうが、住宅環境から泣く泣く処分する場合もある。そういうのを送って、自分だけが見れるようにすれば良い。僕の場合は、70年代の「ロッキングオン」や「ポンプ」という自分で作った雑誌があるのだが、みんな持っていってしまうので、1部ぐらいしか残っていない。そういうのをネットでアーカイブしてくれるサービスがあれば、仕事的にも助かる。雑誌書庫サービスだな。(しかし、雑誌コンテンツの権利関係って、何も整理してないな。テレビと同じで作りっぱなしだったから、写真もモデルもライターも、バックナンバーをアーカイブにするなんてことは考えてこなかったからな。この辺も整理する必要ありだろう)

▼提案3

◇書籍の場合は、著者の死後50年で著作権が切れるが、雑誌の場合はどうなんだろう。著作権が切れた雑誌の青空文庫が出来ると助かる。大宅文庫のデジタル化みたいなものだ。特に学術ものや、建築雑誌などは、学生たちにとっても必要な資料となるだろう。

▼提案4

◇ これは、デメ研の関連出版社「オンブック」で追及していることだが、神田の古本屋にある著作権切れの書籍、古書などをグーグルなみにスキャンして、オンデマンド出版したい。古い雑誌であれば、やはり紙に落とした方が読みやすい。宮武外骨の雑誌なんか、まとめて出したい。数年前のブックフェアだったっけ、書籍の自動スキャン装置「Kirtas BookScan 1200」が出品されていて、欲しくてたまらなかった。2000万円なので諦めたが(笑)。Googleやアマゾンには大量に、このスキャン装置が並んでるんだろうな。ちなみに、日本のあるメーカーの技術者に聞いてみたら、「指紋認証技術を使うと、古い雑誌の文字読み取りは簡単かも知れない。1000万円ぐらいで出来ますよ」と。ただし「ロットは最低200台」(笑)。こういう技術開発で、日本は世界に進出してもらいたいものだ。

 とゆーことで、「トラブルが最高のビジネス・ブレスト」という深呼吸する言葉を思い出しながら、まとめてみた。あと、コルシカの取次店については、ネット上でたくさん晒されているが、取次も必死なので、文句を言わないように(笑)。明日の出版界のために、何をしてはいけないか、ではなくて、何が出来るのかを考えよう。どうも日本の出版界は、自らの資産を吟味することなく、業界外からのコンテンツビジネスの参入については、まず身構えることから始まり、排除していくことに一生懸命になりすぎる。今は、古い価値観を固守することよりも、新しいビジネスモデルを追及することにエネルギーを集中すべきだと思うのだが。

▼以下、参考サイト

■コルシカサイト

■田中禎人さんの創刊宣言

■日本雑誌協会がコルシカに抗議

■ガジェット通信は、「買ってみた」を記事にしてる。


■Kirtas BookScan 1200、欲しい!

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