iPad宣言
[社説]
2010年4月24日 09:02
iPadプロジェクトがスタートしています。
●橘川幸夫
▼iPadとは何か。
◇デジタルメディア研究所と、オンデマンド出版のオンブック、システム開発のラングとのiPad共同プロジェクトが開始しています。
◇橘川の個人的な感想から言うと、「iPadはパソコンのウォークマン」です。ウォークマンが登場した1979年、音楽を聞くための音響機材はさまざまな進化を遂げて安定期に入っていました。そこに、聞くことしかできない再生専用のウォークマンが登場したのです。技術的な新しさよりも、僕たちは70年代に親しんできた音楽を、自宅の部屋で聞くのではなく、屋外で聞くということを知ったのです。そして、ウォークマンで音楽を聞きながら街に出たり、公園を散歩したりすると、見慣れた風景が、違う風景に見えることに驚きと感動を得ました。
◇iPadは技術的な素晴らしさよりも、パソコンを別なシーンで楽しむことが出来るということに、僕はウォークマン以来の興奮を得ました。これまでパソコンは机の上に置かれたディスプレーに向かって仕事したり遊んだりしていました。ノートパソコンやネットブックは、その机上のパソコンをポータブルにしただけです。言ってみれば、喫茶店のテーブルの上が自分の机の上と同じになるというものだけでした。
◇ところがiPadは全く違う。本を読むようにパソコンの画面を見ることが出来るのです。iPadは電子書籍リーダーではなく、「書籍のようなパソコン」です。これまでにもタブレット型のパソコンはあったかもしれませんが、iPadはパソコンを持ち運びしやすくする、ということではなくて、「机の上のパソコンを超える」という明確なコンセプトがあります。
◇iPadでYouTubeを見ると、これまでのパソコンで見ていた風景とは違うものが見えます。首が正面を向いているのと、僕らが慣れ親しんでいる、首を下げて、うつむきながら本を読むスタイルでiPadを見るのとは、明確に違う。僕らは、はじめて「バソコンを読む」という体験をしたのです。見るのではなく読むのです。
◇iPadでグーグルのニュースを読むと、電子新聞というのはこういうものかと理解します。単体の新聞社で自社媒体を電子化するのではなく、新聞の集合知としてのダイジェストがそこにあります。インターネットは、さまざまな川が合流する海です。そしてそのことを、現状の新聞の距離感と同一に読めるのがiPadです。
◇僕たちは、世界に登場した新しいツールを、思う存分使いつくしたいと思います。関心のある皆さんとの協同を進めていきたいと思います。
▼まず何をするか。
◇僕たちが取り組んでいることは、まず、iPadにどのようなコンテンツを登場させるか、ということなんですが、それ以前に重要なことがあります。例えば書籍コンテンツということを考えた時に、グーテンベルグが印刷技術を開発し聖書というキラーコンテンツを搭載したわけですが、そこで発明されたことは「頁」という概念であり、「頁をめくる」という読書行為です。この概念や行為が発明されていなければ、本はただの巻紙になっていたかも知れないし、壁新聞になっていたかも知れない。
◇電子書籍というと、多くは、グーテンベルグ以来のリアル書籍を電子化することだと思われています。それはそれでありだと思いますが、もうひとつ別な道を探ろうと思います。それは、現在時点をグーテンベルグが活版印刷技術を発明した地点に巻き戻して、そこから「頁」の概念や「頁めくる」という行為に変わるものを開発したい。それは、紙の印刷よりも多様な方法があると思います。
◇すでにいくつかアイデアが出て来ていて、開発にも着手していますが、こうした「電子書籍の基本作法」の開発が重要だと思います。その作法が洗練された上で、新しい表現者が合流してくるのでしょう。
▼ビジネスプラン
◇僕らのプロジェクトは、独自の開発と実験を行っていきますが、外部のコンテンツホルダーの皆様との協業も進めていきます。すでにいくつか相談を受けていますが、コンテンツのiPad最適化の作業をお引き受けします。
◇またオンデマンド出版のオンブックがありますので、iPadコンテンツとオンデマンド出版の並立も可能です。既存の出版物のiPad出版も準備中です。
◇iPadについてのコンサルティングやセミナーの実施は、デメ研が中心となって行って行きます。
◇iPadの可能性を理解される皆さんと、一緒に考え、進めていきたいと思っています。どうかよろしく御願いいたします。